STAP細胞は捏造?ATPと検証実験と再現性
STAP細胞は再現できなかった?-ATPでやってみた
主眼であった小保方博士と若山博士の作業分担の連続再現は今回見られませんでした。
番外編の丹羽博士の実験によりES細胞を元にしても胎盤をともなったキメラマウスをつくれるというFI幹細胞は造れないことから、小保方博士にかけられていた遠藤高帆博士のES細胞を手渡した説は無効だと思います。
死細胞の自家蛍光でしかないという疑惑も晴れましたが、キメラ法で多能性は確認できなかったので、少なくとも当初のキメラをつくるような「全能性」があるSTAP現象という仮説が成り立つ可能性は非常に少なくなったと思われ、今後この特許記載のATPを使用する方法で肝臓から得られたOct3/4陽性細胞がなんらかの方法で体細胞へ分化するかどうかは確認するべきだと思いました(完全に再現できないわけではないので、再現性が落ちる原因となる見落としているファクターが無いとは今も言えませんが)。 再現性の問題なのか、不正なのかは、この実験では明確になりません。
再度浮上する疑惑は哀切色
個人手技がほとんど関係しないSTAP幹細胞作製とFI幹細胞作製でも再現がとれず、優れた手腕を持つ清成博士でもキメラマウスを造れなかったことからも若山博士への疑惑が生じますが、それを晴らすには若山博士がこのOct3/4陽性細胞からキメラマウスを造るか、他の研究員の操作を疑うか、他の原因がありえると説明する以外に無いと思います。若山博士だとできる可能性もまたゼロとは言えません。
- 特許記載のATP:
- 実験当時の小保方氏担当パート
- 丹羽博士
- 細胞塊(緑・赤):肝臓 B6マウスで78%、F1マウスで44%
- 多能性細胞特異的分子マーカー(Oct3/4)
肝臓 17%にES細胞と比較して10%観察された。 - Oct3/4-GFP遺伝子緑色蛍光タンパク質(GFP)の光は見分けられなかった。
- 丹羽博士
- 実験当時の若山氏担当パート
- キメラはできなかった(今回は清成博士)
- 増殖が観察できた。継代増殖はしなかった。FI幹細胞、STAP幹細胞はできなかった。
- 実験当時の小保方氏担当パート
- 酸浴
- 実験当時の小保方氏担当パート
- 小保方博士(全て脾臓)
- Oct3/4GFP陽性含む細胞塊の数
- 顕微鏡-10個/10の6乗あたり (論文よりは少ない)
- FACSによる検出-CD45陰性のGFP+が含まれる細胞塊2個/19個(全体の6%と9%)
- 赤色蛍光を含まないOct3/4緑色蛍光GFP(死細胞による自家蛍光を含まない)
- 確認されたが少ない 多能性細胞特異的分子マーカーの発現との相関:小
- Oct3/4GFP陽性含む細胞塊の数
- 小保方博士(全て脾臓)
- 多能性細胞特異的分子マーカーの発現:脾臓
- Oct発現 確認されたが論文よりずっと少ない GFPとの相関:小
- Oct3/4、Nanog、E-cadherinタンパク質の発現
- 確認されたが少ない GFPとの相関:小
- 丹羽博士
- 脾臓:GFP陽性(赤色含む)全てCD45陽性の分化細胞
- 実験当時の若山氏担当パート
- キメラはできなかった(今回は清成博士)
- FI幹細胞、STAP幹細胞はできなかった。(今回は丹羽博士)
- 実験当時の小保方氏担当パート
STAP細胞への疑惑について解ったこと
遠藤高帆博士のSTAP細胞はES細胞説
ES細胞からFI幹細胞(ES細胞とは違い胎盤へ奇与できる)は造れなかったことで、STAP細胞の正体は小保方さんから手渡されたES細胞だという疑惑はおそらく成立できなくなりました。
調査委は遠藤博士がトリソミー8だと解析したデータについて何も発表しませんでした。理研の各委員会でも理研でもトリソミー8については何も判断していないようです。
元々、STAP細胞は保存できない上にほぼ増殖しないので、解析したサンプルは体細胞そのまままたはES細胞のコンタミの可能性がありますので、遠藤博士が解析した論文提出後のデータは実験当時のものではなく、そのデータ解析では直接的に疑惑をかけられる性質のものでもありません。
東京工業大学の伊藤武彦博士のご説明はとても重要な説明だと思います。
2014/12/26調査委会見 1:18:30~
古田彩記者:若山先生が造ったES1とほぼ同一のものが1つ特定されていますが(STAP細胞由来ChIP-seq (input)サンプルは129B6 F1ES1から取得された)、FES1と同じではないかなと遺伝子バックグラウンドからそう推定できる細胞がいくつかありますですね。
RNA-seq、これSMARTerのSTAPと ここには書いてないですけども それからTrue-SeqのSTAP-STEMセル それからChip-SeqのFI-STEMセルですね。これはFESであるということは特に断定 想定されておらず、遺伝的バックグラウンドつまりアクロシンが入っているところが同じだというところまでの判断ですか?
伊藤武彦先生:全ゲノムを解析しているわけではありませんので、全ゲノムを解析している場合には、あの 30億塩基対に対してどれだけSNP(スニップ)が入っていてどれだけ一致するかというところで見ているわけですが、例えばChip-Seqですと非常に、これあのinputですので薄い、全体からして0.何掛けくらいのデータしかありませんので、SNPに対してそこまでの精度を持って一致するとか判断することは非常に危険だと思いますのでそれはやっておりません。
同様にRNA-Seqに関しても、例えばこれ次世代シーケンサーでゲノムの方を読んだ場合には、ゲノムに対して30倍程度の被覆率まで読んでます。それに対してRNAで例えば30倍の遺伝子の発現量がある領域にさらにそこにSNPが入ってるていうことは極めて限られておりますので、危険だと判断してそこまで踏み込んだ解析はしておりません。
古田彩記者:可能性があるもの、全ゲノム読んだとしてもRNA-Seqのデータからは、その株を想定できるだけのSNPの相同性が
伊藤武彦先生:結局、要は、RNA-Seqのデータ、ま それが仮にRNAとして残っていたとしても、読むのはゲノムのほんの数%の領域ですし当然遺伝子が発現しているところにはSNPは少ないですので、なかなかこれだけ、どれとどれが完全に一致します、99.9%一致しますというデータを出すのは非常に危険だということでやっていません。ただ唯一やったのが、ジーラスの方に残っていたChip-SeqのinputしかもSTAP細胞のinputは【DNAとして残っていた】ので、それが10頁のパワーポイントのところに書いてある3番のアイテマイズして書いてあるところですけれども、これに関しては30倍になるだけ他のゲノムと同量になるところまで読んでいます。そして読んだ結果、同一であると認定したということで、それ以外に関してはもう残ってしませんのでやってません。 2014/12/26調査委会見1:18:30~
TCR再構成批判
STAP細胞にはわずかに見られたものの、STAP幹細胞には見られなかったTCR再構成。それによって架空の細胞だと言われましたが(他の細胞がSTAPに奇与しているだけだとも言えるので、それだけで非存在は言い切れないとは思うのですが)、とりあえずはSTAP細胞様の物は観測できたので、実験の全てが架空とは言えません。TCR再構成が見られなかったSTAP幹細胞は今回は再現することができませんでした。
若山研にいないはずの遺伝子のマウスでは?
7月22日に否定されています。3月から7月までの大騒ぎは、無駄だったのかもしれません。
死細胞の自家蛍光に過ぎない
そういうわけではなかったものの、もしかしたらなんらかの意味がある指標になっていないのではと思いました。論文筆者は、強い気持ちでGFPの光との相関を想定しているように思います。ATPの結果と酸浴の結果を混ぜているようですが、あまり適切な書き方ではないのかもしれません。
実験の感想
Oct3/4多能性細胞特異的分子マーカー陽性細胞(アデノシン三リン酸にて)
特許掲載のATPアデノシン三リン酸では、肝臓から増殖するOct3/4多能性細胞特異的分子マーカー陽性細胞が観察できたのは面白いと思いました。キメラを作る全能性ではなくても、何かの細胞に分化したりできるのでしょうか。それとも胎仔の肝臓にある造血幹細胞をひろっただけなのでしょうか。
個人手技
実験者で差が見えます。何かの要因が隠れている可能性があります。
再検証実験の目的
論文や特許に記載されている方法で再現できるかどうかの確認です。特に下記の点(小保方博士と若山博士の作業を同時に連続して行う事)が要点となります。
1.Oct4-GFPを発現しない脾臓の血球系細胞からOct4-GFPを発現する「他の細胞では知られていない」形質を持った小型細胞の塊が生じること
2.胚盤胞への注入された細胞の貢献は、ES細胞やTS細胞では説明できない特別な多能性の表現型を示し、また内部細胞塊や桑実胚の細胞とも考えにくい
1.2.を統一的に考えるのに、STAP現象は現在最も有力な仮説と考える
今後の理研でのSTAP現象の確実な立証には、1.2.の現象を連続的かつ統一的に、客観性の担保された状況下で第3者の研究者が実証することが非常に重要 「科学研究面に関する説明資料2 理化学研究所 笹井芳樹著」,2014年4月16日会見資料
再検証実験は必要ないという意見について
文部科学省の「 研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて 」にて下記のように記載されているので、このような方法に反対でかつご自身が疑惑を疑われた際にもチャンスが無くても良いのであれば、次回のガイドライン改定の際にそのように提言されてみれば良いと思います。
1.調査委員会の調査において、被告発者が告発に係る疑惑を晴らそうとする場合には、自己の責任において、当該研究が科学的に適正な方法と手続に則って行われたこと、論文等もそれに基づいて適切な表現で書かれたものであることを、科学的根拠を示して説明しなければならない。そのために再実験等を必要とするときには、その機会が保障される(4 2(2)3 イ)。
「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」 研究活動の不正行為に関する特別委員会報告書4 告発等に係る事案の調査 3 認定 (2)不正行為の疑惑への説明責任
STAP細胞検証、マスコミ報道への苦情
検証実験会見の数時間前に報道して、無い、無い、1600個やっても無いと連呼されましたが、ディテールを正確に会見放映される前にリーク合戦をする報道のせいで、せっかくの検証の印象ががらりと変わり、無意味なものになってしまっています。どこからリークされるのかは知りませんが、正確に報道する姿勢はどうも皆無のようです。
論文発表の際も思いましたが、論文本体を読まないで報道したり、発表したてのものを事実と報道したり、50年後、100年後の技術と筆頭著者が述べている点を報道しなかったり、iPS細胞時代は終わったこれからはSTAPの時代だというのは違うと釘を刺した笹井博士の言動を報道しなかった点は非常によくなかったです。でもまだそんな姿勢のままで、真実を報道するつもりは無いようです。
悲しさと絶望しか残さなかったSTAP細胞騒動
検証は、明確になった点があり有意義だったと思います。しかし、たったこれだけの検証がなぜ、粛々とできなかったのか情けなくなってきます。今のところ捏造と判断されたのはテラトーマ写真のうち筆頭著者が昔撮影したSTAP細胞実験の写真だけで、その判断の妥当性も議論の余地があると私は思っています。
相澤博士の最後の言葉が深く胸に突き刺さりました。
人類が失った宝物。
一論文疑惑と科学者達の罵詈雑言だけが残りました。
STAP細胞検証実験の図表
社会現象となったSTAP細胞とはなんだったのか。記録用に資料を貼り付けました。
ATP(アデノシン三リン酸)、特許に書かれたSTAP様細胞の場合
- 細胞塊は見られた
- 肝臓の細胞では、Oct4発現の光は観察されなかったがOct3/4蛋白と遺伝子はES細胞と同等程度に見られた。
- 多能性マーカー遺伝子発現も見られた。
- STAP様細胞は増殖したが、継代増殖しなかった。
酸浴(塩酸)STAP様細胞の場合
- 自家蛍光では?と疑われていた緑色蛍光は、ごくごく僅かに観察できましたが少数でした。
- Oct発現
