STAP細胞の正体はES細胞だったとは言えない?

STAP細胞の正体はES細胞だったとは言えない?-未記録の大田ES細胞

(直近の簡潔な結論はこちら)コンタミネーション(幹細胞汚染)の可能性がある論文について報道機関と研究者社会が犯人ありきで率先して日本国中で苛烈なバッシングをした意味とはなんでしょうか?ATP実験の報道がほぼ皆無という異常な状態です。

STAP細胞事件と人権侵害

科学的には論文取り下げの2014年7月22日に既に決着済みです。どの程度の不正があったのか、なぜキメラができたのか、世間の彼女への酷評は妥当だったのかそれとも投影による悪女化(魔女化)だっただけで、名誉回復されるべき点があったのかどうかという人権問題も存在していました。 世間一般で共有された叩いていいというコンセンサスがある一線を越えると、何かで悪と認定された人物の人権は全く考慮されなくなり同調圧力的メカニズムで際限ない揶揄やバッシングに至る傾向が日本社会にはあると思います。

理研調査委の会見,2014年12月26日

STAP細胞の正体は若山研究室で培養されていたES細胞だった可能性が非常に高いという発表が2014年12月26日ありましたが、まだまだ深い謎は残ったままです。

わけですが、提出された細胞とよく似た遺伝子である事はわかりましたが、上記の診断方法ではES細胞であるかも、何を元にSTAP細胞関連残存物が作られたのかも、まだ判断できないないはずです。

ES細胞だと解析できない?

研究所にいたマウスを調べても市販のマウスを調べてもSTAP由来試料にみられる2カ所の遺伝子変異は残っていないから、その変異を持ったES細胞から派生したのだろうと結論されましたが、現在残っているマウス群に無いから過去にその様な変異を持った個体が存在しなかったとは論理的に言えないはずです。マウスの仕入れ先の環境によっては実験が行われた2011年の日本はレベル7の原子力発電所事故があった環境ですから、相対的に普段よりかは二本鎖切断(クラスター損傷)起因の非相同末端接合が多く生じ易い環境と言えないこともないとは思いますし、日常でも放射線でたまに生じる切断と修復の形態です。

遺伝子が論文の記載と違う原因について細胞になってからのコンタミネーションや故意の取り違えだとの暗黙の前提上で考えられていますが、小保方博士へマウス担当者がマウスを渡していた際に既に違っていた可能性は、故意であれ品質事故であれまだ否定できていないとも考えられます。遺伝タイプまで通常チェックする人はいませんから、ノートとの整合性を重視してもどうしてキメラマウスが発生したのかという回答に対しては無意味です。科学の証明過程だけを問題にするのであれば、沢山のミスがあったため取り下げた2014年7月22日時点で調べる意味すらそもそもありません。
CDB旧若山研究室はES細胞を頻繁に使用する研究室ですから、コントロール用であってもなくてもSTAP細胞実験と同時にそれらマウス組織からES細胞が作られていても自然です。凍結したES細胞を他の研究員に知られることなく保持するのも可能でしょう。
若山研究室では冷凍死体マウスからクローンマウスやを作る技術もあるので、過去に作ったES細胞と同じ遺伝子変異を持ったクローンマウスやそれから作れるES細胞を数年後に使用することも可能です。核移植技術の匠の手技とは、様々な可能性を持つ神技です。

もしそれらSTAP細胞実験とは直接関係していない遺伝子が同じであるES細胞が2014年に提出されたとしても、遺伝子の同一性しか調べていないので、STAP細胞の素になったES細胞がもし当時存在していたとしてさえも、我々はそれらをどちらがどうと区別することができません。

理研バイオリソースセンターががん細胞の部位取り違え事件を発生させたり、Natureでは世界中の研究室でラベリングのミスの多発と防止についての記事がでたり、あってはいけないものの多発している品質管理ミスは遠藤高帆博士のご提言通り隠すのではなく遺伝子タイプの解析等で品質管理するべき問題だと思われます。

AZ521細胞(理研登録番号RCB2087)を胃癌由来細胞株としてご提供してきましたが、当該細胞が胃癌由来細胞株ではないことが最近の解析により判明いたしました。…AZ521細胞(理研登録番号RCB2087)は、東北大学加齢医学研究所医用細胞資源センター(東北大細胞バンク)の細胞バンク事業の終了に伴い、2004年12月に同センターから理研細胞バンクに移管を受けて提供を実施してきた細胞です。最近実施した検査により、AZ521細胞のマイクロサテライト遺伝子多型解析(Short Tandem Repeat (STR)多型解析)の結果が、米国細胞バンクATCCが提供しているHuTu80細胞(十二指腸癌由来細胞株)のSTR多型解析結果と完全に一致しており、当室から提供していたAZ521細胞は取り違えが起きた細胞であるという結論に達しました。AZ521細胞について緊急のお知らせ」理研バイオリソースセンター,平成26年3月26日
ウシとサルの相違点は明白で、ガとカも容易に区別がつきます。それなのにどうしてそれを取り違えた科学研究が存在しているのでしょうか。 答えは簡単です。現代の研究室で保管され、使用されている数百点の細胞株のラベルが間違っているのです。
ブタ細胞の一部がニワトリの細胞として保管されていたり、ヒトの細胞株だと宣伝されている複数の製品にハムスター、ラット、マウス、サルの細胞が混入していたりするのです。
こうしたお粗末な取り違いが存在しているという事実があり、他方で、不適正なラベル表示や同一性の誤認、コンタミネーションが判明している細胞株が研究で日常的に使用されているという事実がありますが、どちらがより深刻な問題でしょうか。 細胞株の同一性の問題に対する取り組み,Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2015.150734

大田ES細胞の謎

(2014/12/26調査委会見,桂委員長 10:50~) FES1は若山研に2010年まで滞在した人が若山研で作成して、ほとんど実験に使わなかったと言われています。でも作ったことは作った。で、その人の話では若山研を出るときに持っていったという記憶しかない。全部持っていったという記憶しかない。それから、若山先生に聴きましたところ、その人が出てから、若山研に残っていたという記録がない。その細胞株がですね、FES1が若山研に残っていたという記録がない。それから実は調査委員会では若山研にいた人のノートを全部チェックいたしましてFES1ないし実名が沢山あるんですけれどもそれがノートに書いていないかチェックいたしました。で、ありませんでした。これはその細胞を使った人がほとんどいないということと一致しています。
大田氏は2010年3月に若山研から転出するにあたり、自分の樹立した細胞をすべて運び出したはずだという。今回の調査に使われた細胞は大田氏がこのために提供した。若山研でSTAP研究がはじまったのは2011年4月から。…大田氏によると。在籍中に若山研のメンバーに問題のES細胞を渡した記憶はないという。…大田氏は「(2010年に)すべて運び出したつもりだが、同じ株がCDBにあったのなら、私が置き忘れたのかもしれない」と話す。 「特集 STAP細胞の全貌 幻想の細胞判明した正体」詫摩雅子・古田彩著,日経サイエンス2015年3月号P.40

以上の理由で、STAP細胞の正体はES細胞と言うのはまだ早いと考えています。不正行為の調査なので、疑惑をかけられた人達の口頭での申し出だけをそのまま信頼するわけにもいきません。

研究不正の定義について

日本の研究不正の定義はアメリカのORIと合っていません。特にHonest errorについての解釈があまりにもかけ離れていて、ミス、分野の慣例への無知、学説意見の相違も不正に数えていると思われます。法学・哲学等、日本の文系学問が政治的に弱い土壌の反映かもしれません。

" Misconduct versus honest error and scientific disagreement. "Resnik DB, Stewart CN Jr.,2012;19(1):56-63. doi: 10.1080/08989621.2012.650948.Honest-errorと研究不正
論文が撤回されるのはなぜ?」クラリンダ・セレホ著

論文改訂時に刺激を低酸と書き換えた為に不正と認定された可能性

物理刺激テラトーマと低pHテラトーマ

2014年12月26日研究論文に関する調査委員会の会見にて、笹井博士が論文リバイズ最終原稿でHclと書き換えたと報告されています。その前は刺激(Stimulus。STAP細胞の和名は刺激惹起性多能性獲得細胞、英語名はStimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cells)と書かれていたようです。リバイズは若山博士が担当していたと若山博士ご自身がインタビューで答えておられるのですが、笹井博士は既にお亡くなりになっているので確認のしようがありません。

リバイズ時にもしも過去の文脈を忘れて書き換えたであれば、博士論文で物理刺激にてSTAP細胞(当時はスフィアと呼ばれていた)の実験をしていた画像を刺激という言葉で参照していた原稿では問題がなかった状態から塩酸・低pHと書き換えた為に齟齬が生じ、意思疎通がとれていなかった為に外見的に不正-論文発表前のプレスリリースにて酸浴が広く報道されたこともあり-博士論文の画像の使い回し、博士論文は物理刺激テラトーマなのに低pH・塩酸由来テラトーマと書いてある-に見えた悲劇が起きたのかもしれません。

複数の研究者が書き換えた為か写真も文章も混乱していますが、部位を間違えた(骨髄由来だった)ミスはあるものの、doi:10.1038/nature12968は冒頭で物理的刺激について触れられ、そのメソッドにも博士論文執筆時に考案された物理的刺激方法も併記されているので、本質的にこのミスを不正とまで言えるのか、もし仮にこのミスを不正と言えたとしてもここまで世間に揶揄される不正かどうかは疑問です。

「そこで, 低浸透圧の溶液で細胞を短時間処理する方法, および先端径10μm程度のパスツールピペットで吸引と吐出を繰り返して細胞を粉砕す る方法を考案し,小さな細胞のみの回収に成功している。」"三胚葉由来組織に共通した 万能性体性幹細胞の探索"2011年2月小保方晴子,早稲田大学大学院先進理工学研究科博士論文審査報告書

Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency

Haematopoietic cells positive for CD45 (leukocyte common antigen) are typical lineage-committed somatic cells that never express pluripotency-related markers such as Oct4 unless they are reprogrammed12, 13. We therefore addressed the question of whether splenic CD45+ cells could acquire pluripotency by drastic changes in their external environment such as those caused by simple chemical perturbations.…

意訳:…CD45陽性造血幹細胞(白血球共通抗原)は、リプログラミングされない限りはけしてOct4の様な多能性関連マーカーを発現しない典型的な分化系列決定された体細胞です。それゆえに我々はCD45陽性脾臓細胞が単なる化学的摂動に起因する様な外界の環境中の大幅な変化によって多分化能獲得できるかどうかという論点を呈示します。…

CD45+ cells were sorted by fluorescence-activated cell sorting (FACS) from the lymphocyte fraction of postnatal spleens (1-week old) of C57BL/6 mice carrying an Oct4-gfp transgene14, and were exposed to various types of strong, transient, physical and chemical stimuli (described below). …

意訳:…Oct4-GFP導入遺伝子を持つC57BL/6マウスの誕生後(1週齢)脾臓のリンパ球断片のCD45陽性細胞はフローサイトメーター(FACS)でソートされ、様々なタイプの強く一時的な物理的・化学的な刺激へ曝露された。(下記) …

…STAP by exposure to other external stimuli
To give a mechanical stress to mature cells, a pasture pipette was heated and then stretched to create thin capillaries with the lumens approximately 50μm in diameter, and then broken into appropriate lengths. Mature somatic cells were then repeatedly triturated through these pipettes for 20min, and then cultured for 7days. …After each treatment, the ratio of Oct4-GFP-positive cells was analysed by FACS.

意訳:…他の外部刺激によるSTAP細胞: 成熟細胞へ機械的ストレスを与えるために、パスツールピペットを加熱しその際に直径約50μmルーメンの薄い毛細管を造るために引っ張り、 そして適切な長さに分割する。成熟した体細胞は、その後、繰り返し20分間これらのピペットを介して粉砕し、7日間培養しました。 …各処理の後、Oct4-GFP陽性細胞の割合をFACSによって分析しました。

"Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency",Nature 505, 641–647 (30 January 2014) doi:10.1038/nature12968

ATP(アデノシン三リン酸)を書かなかった悲劇

論文改訂稿は若山博士が担当していたと若山博士ご自身がインタビューで答えておられるのですが、桂委員長の説明では、笹井博士が(も?)担当していたそうです。 改定の際、沢山の特許をお持ちでハーバード大学との共同の特許取得でもあり論文査読者を完全に信用していなかったためなのかどうか(歴史を揺るがす発見なら、故意に査読で落としてアイデアを盗るというのはありえることだと思います)、ATPは特許には書いてあるそうですが、論文には書かかずHclと書いたとのことです。もし2014年春のプロトコールエクスチェンジの時にでもATPを付け加えて書いてさえいたら、2014年12月19日会見の結果があるので、小保方博士の世間での評価は全然違っていたことでしょう。2014年8月はじめに中間発表を前にしてATPで少しなにか見えるかもと丹羽博士は笹井博士に話しているはずで、もし笹井博士が本当に改訂者であるのならとても後悔されたのではないでしょうか。


(2014/12/26調査委会見,桂委員長 0:50:40~) 一番最初に小保方さんは、小保方さん独自の理論を持っていて、ATPの添加によってSTAP細胞ができると思っていたようです。その後、実はATPのpHを調整していなかったんで、ATPを入れると酸性になっている、それで、ATPが効いているのか酸性が効いているのかという研究をはじめまして、それで若山研のプログレスレポートの7月ごろにやったと思いますけれども、HclでもSTAP細胞ができたと、どうやら酸性らしいというブログレスレポートを書いています。でそれは、ちゃんとして証拠は1つです。
それからもう1つはですね、一番最初12年の4月にNatureに論文投稿しているんですけれども、その時は物質名書いてありません。pHだけが書いてあります。で、このことに関してはpHが効いているということとは一致するので、それでHclが登場するのはですね、実は笹井さんが主にその雑誌とのやりとりをするようになって、改訂稿で、2013年9月の改訂稿の時にはじめてHCLというのが出て来ます。その時になぜHCLになったかというのは、笹井さん亡くなられたので調査ができなくて良く解りません。
もしひとつはですね、はっきりしているのは小保方さんが、えーと、若山研でいろんな人がSTAP細胞を作りたいと言って小保方さんに習ったんです。で、その時のマニュアル、言葉で言ったそうですけども、その時のやり方というのはATPを加えるというやり方です。 それで、小保方さんと若山さんに尋ねたところ、どうやら、ATPでもHclでも、STAP細胞は出来ると思っていたけれども、ATPの方がやや出来やすいと思っていたと、聞き取り調査はそういうことです。 それでえーと、最終的に小保方さん、論文がHclのがあるかATPのがあるかということですけれどもATPのがあるというのは確かなんですけれども、Hclのがあるか無いかというのは、あると言った時と無いと言った時とがあってよく解りません。
それで最終的に最後の頃になってプロトコールエクスチェンジを書く頃になって、これは丹羽さんから聴いたところによるのですけれども、笹井さんもATPって書かなくていいのかって言い出した。ところが丹羽さんが小保方さんに聴いたところ、小保方さんは論文のデータは全部Hclで出したと言ったので、実際にプロトコールのエクスチェンジの原稿を書いていた丹羽さんは、論文がそうだったらまずHclと書いてプロトコールエクスチェンジを出すと。その後で新たな論文としてATPの論文を出せばいいのではないかと判断して、で、そうしたということです。 小保方さんが言ったことが何回か違ったことがあったんですけれども、えー、それは結局は突き詰められませんでした。ということで、不正の認定はできないというのはそういうことです。 一番根底にpHが効いているということが根底にある。
聞き取り調査では小保方さんは若山さんがATPと書かないようにと言ったと言ってますし、若山さんは小保方さんがATPと書かないように言ったと言っています。ただ、今となってはATPでもhclでもSTAP細胞はできなかったんで、それに、まあ、あきらかに思い込んでいれば不正かもしれませんけど、両方とも小保方さんも若山さんも、どちらでもできると思っていたということが根底にあって、非常に不正との認定が難しいということがあってこういう結果になました。

アデノシン三リン酸浴の実験とキメラマウスや幹細胞化実験は別の実験

2014年12月19日の会見のように、新生仔マウスの細胞のATP浴では、小保方博士が担当した箇所は視覚的(OCT4+発現や細胞塊の形成や少し大きくなる現象)は観察する事ができました。

小保方晴子博士が発見した酸浴時の細胞塊形成やATP浴時の多能性マーカーOCT4+発現という未知の現象について知った誰かが、それを新種の多能性幹細胞として主張する為に、その細胞を幹細胞化したり、その細胞からキメラマウスを造ったりした(ようにみせた、または見えた)可能性も充分あると考えています。

STAP細胞事件のからくり

ナチスドイツで大衆に叩かせたスケープゴートは金融業が得意な富裕層の多い国内の少数民族でした。大日本帝国では"非国民"でした。21世紀の日本は成功していたのに“失敗した人"なのでしょうか。大きな罪には触れようともしないのに。

発表からしばらく追加情報が入らないか待っている間に、笹井先生の悲劇をとても悲しく思う気持ちが鉛のように重たくなったために、まとめる気持ちになるまで時間がかかりました。