STAP細胞、小保方晴子博士、笹井芳樹博士の会見

4月16日の笹井さんの会見で一般人のドラマを見ているだけのフェーズから、彼らの責任や事実関係の冷徹な確認、論文の純粋な科学的な議論の段階へやっと入れたと思います。専門家の方々の白熱した議論を楽しみにしています。

2014年4月9日小保方晴子博士の会見の感想

小保方晴子博士の会見は弁護士の仕切りが効果的で長時間のマスコミとのやりとりを大変気丈にやりとげたと感じました。ミスに対する謝罪と、STAP細胞はあります、という素朴な感想を述べられました。理研以外のラボを回られてSTAP細胞の作り方を広めたいそうです。彼女の学位論文の様々な不備から基礎を身につけておられなかった不幸が確認できたと思います。その不完全さの責任の大半は教育を担い博士を授けた大学側にあります。一回だけ許してさしあげる余地があるのでは、と私は感じましたが、プロの方の意見は様々のようです。



2014年4月16日笹井芳樹博士会見の感想


論文の骨子が非常にコンパクトかつシンプルだったのですが、若山さん、小保方さんの論文を笹井さんが書き直されたようで、会見も大変論理的で、お茶の間には良い心証を形成できたものだったと思います。論文の撤回が望ましいと述べられました。以下は当日配布された笹井さんの PDFの要約です。

STAP細胞が重要な仮説である証明について

「STAP細胞(現象)の存在」または「ES細胞等の混入」「自家蛍光」
後者を否定すれば「STAP細胞(現象)の存在」は肯定的な仮説と言える、というご説明です。(以下引用)

  1. ライフ・セル・イメージング(顕微鏡ムービー)
  2. 特徴ある細胞の性質

  3. (上記2つは補助的な仮説?)
  4. 胚盤胞の細胞注入実験(キメラマウス実験)の結果
    1. Oct4-GFPを発現しない脾臓の血球系細胞からOct4-GFPを発現する「他の細胞では知られていない」形質を持った小型細胞の塊が生じること。
    2. 胚盤胞への注入された細胞の貢献は、ES細胞やTS細胞では説明できない特別な多能性の表現型を示し、また内部細胞塊や桑実胚の細胞とも考えにくい。

1(と)2を統一的に考えるのに、STAP現象は現在最も有力な仮説と考える”と指摘され、“今後の理研でのSTAP現象の確実な立証には、(小保方博士の作業である)1(若山博士の作業である)2の現象を連続的かつ統一的に、客観性の担保された状況下で第3者の研究者が実証することが非常に重要”と記載され、若山さんへとてつもなく大きなボールを投げてしまわれたご様子で、報道によるとこの会見に関係があるのかどうかは解りませんが若山さんは体調を崩されたご様子です。

若山さん⇔小保方さん マウス取り違え問題

若山さんから送られたマウスで小保方さんが作製されたSTAP細胞を再度若山さんの元へ送り返された細胞の遺伝子を理研内部(部署、日時不明)で解析したところ、送付したものと送り返されてきたものの遺伝子系が違っていた事件が午後7時のNHKニュースで報道されました。報道前に理研関係者のTwitterアカウントが宣伝していたので、理研の公式見解が見当たらないのですが理研が実施した事は間違いないようです。

STAP細胞とSTAP幹細胞の非連続性

ES細胞以外にも、生後一週間以内のマウスの体内にある未知の未分化な幹細胞みたいなものが混在している可能性も反証仮説に入るべきですが、 論文では他の部位でもSTAP細胞は樹立可能とあったのですが、上記のマウスの取り違えで他の部位でもできるかどうか解らなくなってしまいました。

捏造の意志があれば、同じ系の遺伝子のES細胞を返却すれば良いように思っていたのですが、ES細胞では不可能な現象が見られる(C-2)が真であれば、それもできないことになります。
その細胞によってキメラマウスの樹立は若山さんがしたので、若山さんの手元には遺伝系は異なるけれどES細胞他とは違う幹細胞(STAP含む)が届いていたことになります。

(C-2)が偽で、iPS細胞や(未知の)他の幹細胞でもこの性質のキメラマウス形成がみられることを事前に理研@神戸側がご存じで送り返したのであれば、あるいはどこかに不正があったのかもしれませんが、この辺りが素人には全然わかりません。

理研@神戸で誰が発送と荷受け、管理をしていたのかもわかりません。若山さんは最近まで理研@神戸に所属していたので、同じ研究室の方だったのかもしれません。この辺りにとても不思議があるので、笹井さんは連続してやるを強調されたのかもしません。

証拠と解析方法の問題について

追記:また笹井さんは、理研にある凍結保存された切片を全ゲノム解析をしただけではどの種類の幹細胞由来のものかはわからず特殊な解析が必要であると述べられていました。kahoのブログでCNV解析での試みに言及されていたのですが、他の研究者の方々はそれでは恐らくわからないと述べておられます 参考:STAP細胞:ChIP inputを使ったCNV解析の可否について。 では、どの方法であればわかるのか、その辺り専門家のみなさんのご意見を聴いてみたいです。

上記の各項目の是々非々については、実験の現実をご存じのプロフェッショナルな方以外わからない点ばかりで様々な反論があるようです。
悪口や罵詈雑言のない穏やかで、論理的な議論がウェブ上で繰り広げられるのを楽しみにしています。海外の経済学者間ではとっくみあいのそれに馴染みがあるのですが、日本の自然科学のブログ上の議論の白熱は、そういえば少ないかもしれません。

笹井さんの責任

論文不備の「結果責任」を認めておられました。この点はプロフェッショナルの方々は色々なご意見がありそうですが、実務的には大勢の分業なのでここが限界だったのではないか、というのも、日本の企業の慣行とは異なりますがある程度は了解可能なものだと思います。

小保方さんの責任

また、小保方さんの未熟さについても言及されていました。私も彼女の画像の危うい、引用元未記載の学位論文を見るにつけても、基礎の部分が無いまま大変高度な研究に携わっていた未熟さについては情状酌量させたいただける面があると感じていました。(なされたミスは大変重大で大きなミスですが。)

ネット上の議論

今回の件で随分ギスギスとしたツイートが散見されました。科学的に正しくない(らしい)言動をする市民に対する科学者の侮蔑感情の表出は、正視に耐えないものでした。ミスをしたのは科学者である小保方氏ですし、世紀の発見であると広報されて市民を喜ばせたのもまた科学者社会です。

市民は科学が解っていないと言われても、そもそも論文を通読している方は少なくとも私の周りには存在しません。元論文を読まないのに科学的に考えるも何もありません。
画像の不正がどうこうというのは科学論文の論理的骨子とは別で、画像データの加工や取り違えミスが科学論文ではなぜ致命的なミスと評価されるのかは慣習が異なる科学者社会外部では必ずしも理解されていません。


不正、そして非存在と捏造

「STAP細胞があったら良いのか?」と聞かれます。

「不正があったとしてもSTAP細胞ができさえすればそれで良いのか?」という意味なら、不正は倫理的に悪ですし、観測された現象は善も悪も無関係です。不正が捏造なら、そもそも存在すら未確認です。捏造により確認された現象ならば、STAP現象が観測されただけで良いとはいえません。しかしそれは不正や捏造に限ったお話でもありません。

「STAP細胞ができさえすれば、それのマイナス面があるかもしれないよ?」という意味なら、確かにマイナス面があるかもしれないので良くありません。

STAP細胞が在る=科学的観測によって確認される(STAP現象)、または捏造され在ると認識していまう、だと思います。
今未確認ながらも在る、または無い、かは神のみぞ知るです。

STAP細胞が在る、は、悪いとは言えないと思いますが、良いとも言えないかもしれません。色々な意味において。