安保法案はアーミテージレポートを元にしていない

現在国会で議論中の安保法案( 平和安全法制関連2法案 )は、3つのナイ・アーミテージレポート-2000年2007年2012年 によるものという意見がありますが、その説には疑問があります。

安保法案はアーミテージレポートを元にしていない-安倍内閣の暴走

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
作『集団的自衛権と日本の安保法制』(図)はクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスで提供されています。

日本国憲法の制約

我が国の防衛政策はどのような憲法上の制約を受けるのかについて、木村草太先生のコンパクトなまとめ。

従来の政府及び有力な憲法学説は憲法13条が自衛のための必要最小限度の武力行使の根拠となると考えてきました。憲法13条は生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は国政の上で最大の尊重を必要とすると定めており、政府に国内の安全を確保する義務を課しています。個別的自衛権の行使はその義務を果たすためのもので、憲法9条の例外として許容されるという解釈も可能でしょう。
他方外国を防衛する義務を政府に課す規定は日本国憲法には存在しませんから、9条の例外を認めるわけにはいかず、集団的自衛権を行使することは憲法上許されないと結論されます。 また、自衛のための必要最小限度を超える武力行使は憲法9条とは別に政府の越権行為としても違憲の評価を受けます。そもそも国民主権の憲法のもとでは政府は憲法を通じて国民から負託された権限しか行使ができません。
そして日本国憲法には政府に行政権と外交権を与える規定はあるものの、軍事権を与えた規定が存在しません。憲法学説はこのことを軍事権のカテゴリからの消去と表現します。  憲法が政府に軍事権を与えていない以上日本政府が軍事権を行使すれば越権行為であり違憲です。
衆院平和安全特別委員会公聴会公述人木村草太首都大学東京准教授2015年7月13日

憲法第9条と集団的自衛権行使

集団的自衛権は日本の憲法下では違憲と解釈されるようです。(2015年6月4日 衆議院憲法審査会)

尖閣諸島問題は個別的自衛権

たとえば尖閣諸島等日本有事の際は、日本の自衛隊は個別的自衛権で動きます。

安倍政権がしきりに、「尖閣が今、非常に危険な状態にある。それから、北朝鮮が核を保有して、ミサイルが飛んでくる。今までこんな厳しい状況にはなかった。安全保障上の環境がかつてなく厳しい状況になっている。だから、集団的自衛権だ」ということを言っている。では、一体どのようなことになるのか。アメリカはどう言っているかというと、尖閣は日本の施政権の下にあって、そしてそうである限り、それは安保第五条の、アメリカの防衛義務の適用範囲だと言っているわけです。日本有事となると、日本にとって必要なのは個別的自衛権なのです。だから、尖閣防衛のための集団的自衛権というのは、論理的にまったくつながらない話だと思うのです。「自分で考える集団的自衛権」青灯社,柳澤協二,52頁(2014年10月25日)

日本有事、個別的自衛権で自衛隊は日本の防衛をする外国軍を護れる

日本有事の際は個別的自衛権で自衛隊は日本の防衛をする外国軍を護れるようです。既に内閣の意図は現行法で可能なわけですから、国民から見て今回の法案の真の狙いが解りません。単に集団的自衛権の行使ができるきっかけを作る事が目的なのではと猛烈な反発を招いています。

もっとも外国への攻撃が同時に日本への武力攻撃の着手になる事態であれば、現行法でも武力攻撃事態と認定ができるはずであり、個別的自衛権を行使することは可能です。この点は1975年10月29日の衆議院予算委員会における宮澤喜一外務大臣答弁以降何度か確認をされていることであります。衆院平和安全特別委員会公聴会公述人木村草太首都大学東京准教授2015年7月13日
確かに防衛出動が、七十六条が発動されるような事態を想定しておられる話であるということは、私もそのように思いますが、つまり、仮にわが国に直接の危険がありまして、そうして米軍と自衛隊とが共同作戦をせざるを得ないというようなときに、自衛隊の艦船が米軍の艦船を守るか守らないかというのがいまのお話でございますが、実は一番危殆に陥っておりますのはわが国自身でございますから、そのときに、共同作戦をしておって共同の艦船を守らないということは、普通常識的に考えればいかにも奇妙なことになるわけであろうと思うのであります。しかし実際には、自衛隊の海外派兵というもの、あるいはそういう危険というものをわれわれは冒してはならないというふうにかたく考えておりますから、結果としてそういうミスを犯すようなことがあってはならぬというのが、従来から政府が強く思っておることであろうと思うのでございます。それがゆえに米軍の艦船を守る責任はない、あるいはそれを主たる目的とするような行動をとることは差し控えるべきである。しかし結果として、一緒に共同して敵勢力に当たっておるわけでございますから、それがその共同の艦船に対して何がしかプラスになるという結果になったとしても、そのこと自身までを否定し得るかということになれば、それには常識的に問題があるのではないか、というのじゃなかろうか。
宮澤喜一外務大臣,第76回国会衆議院予算委員会議事録8号昭和50年1975年10月29日

ミサイル防衛のために集団的自衛権は必要?

米国の核の傘の下にいるので米国のミサイル防衛は日本の防衛と言う事も可能ですが、そもそも日本が今議論している中国や北朝鮮から米国本土へのミサイルは日本の領海を通過しないため、アメリカがアラスカで迎撃するようです。

アメリカは、こうした弾道ミサイルの飛翔経路や日本のBMD能力を当然知っていますから、北朝鮮や中国がアメリカ本土に向けて弾道ミサイルを発射しようとした場合に日本のBMDに何とかしてもらおうなんて考えていません。アラスカに配備したアメリカ自前のGBI(Ground Based Interceptor)が対処します。「北朝鮮・中国→米本土の弾道ミサイルは日本上空を通過しません」海国防衛ジャーナル,2012年04月07日

ハワイやグアムへ向かうミサイルは通過するようなので、この点は地球上の守備範囲の分担は防衛費節約にもなるので、集団的自衛権の議論をしてみるのも可能だとは思いますが、とりあえずは日本の領海内または近海にいるアメリカのイージス艦が迎撃してはいけないのでしょうか?

アメリカ海軍の最新鋭のイージス艦が18日、横須賀基地に入港しました。…今回の配備は、アメリカの外交・軍事面での重点をアジア・太平洋地域に移すいわゆる「リバランス」の一環としてのもので、最新鋭のイージス艦はさらに2隻、日本に配備される予定です。
「最新鋭イージス艦「チャンセラーズビル」横須賀配備」テレ朝ニュース(2015/06/18 15:00)

ミサイル防衛を問うなら、日本近海の原潜からのミサイル攻撃の方が脅威

私はいまいち現実味を感じないのですが(煽ってるのは日本側の様にも感じます)、もし本気で中国や北朝鮮からの攻撃について話し合うのなら、潜水艦から発射されるミサイルは極めて迎撃が難しいので、そちら-個別的自衛権の範囲の問題ですが-を議論してはいかがだろうと思います。アメリカが南沙諸島問題に敏感なのも、中国の潜水艦を念のために追尾したいのに出来なくなるからだと思われます。
通常のミサイル防衛も、大陸側東端から発射されたものは迎撃は恐らくとても難しいと思われますので、平和の推進以外我が国を護る方法は実質存在しないでしょう。

日本では、弾道ミサイル防衛システムがあれば、敵の弾道ミサイルを相当程度の確率で撃ち落とすことができると報道されているが、中国が弾道ミサイル攻撃を開始した場合、アメリカに着弾するのには20~30分程度かかる一方で、日本への着弾に要する時間は、わがす5分~7分しかない。ましてや日本の迎撃態勢は、イージスBMD(SM-3)とPAC-3の二段階しかないので(アメリカは9段階)、まさに一発勝負に近くなるため、アメリカに比べて、迎撃の条件はかなり厳しい。“第1章 中国「第二砲兵隊」による弾道ミサイル攻撃の脅威"「尖閣を守れない自衛隊」,宝島社,北村淳,2012年12月31日

尖閣諸島問題と集団的自衛と集団的自衛権と個別的自衛権

法案成立を求める背景に、2010年尖閣諸島沖漁船衝突事故と2012年尖閣諸島国有化を契機に勃発した軍事経済問題があります。

日本の脅威は敵国条項にもあるのでは?

近年、核武装を名言する有識者や政治家が複数いますが、国連憲章の敵国条項が適用されれば、日本は正統な理由で攻撃を受ける可能性があるので、控えた方がいいと思います。プルトニウムを米国へ返還したのも疑念を持たれたからだと思いますが、資金付き、核廃棄物引き取り条件付きで原発を輸出したのには裏があると見なされる可能性はあるのでは?と心配になります。


日本は核を持たなきゃだめですよ。持たない限り一人前には絶対扱われない。日本は核を持て、徴兵制やれば良い」石原都知事(11/06/20) ANNnewsCH
加藤典洋氏の「プルトニウム返還要求の意味

日中関係-日本の右傾化と米国の牽制

アグレッシブな石原慎太郎元都知事や、核武装を肯定する安部晋三総理大臣の姿勢が日本を左右しています。

前原(前原誠司氏)は(2012年)十月十二日のテレビ朝日の番組でこう述べた上で、それまで明らかになっていなかった野田(野田佳彦氏)・石原(石原慎太郎氏)会談の核心部分に触れた。この場で前原は、石原が野田に対して「中国と戦争になってもやむを得ない」という趣旨の強硬論を展開したため、その後の事態を懸念した野田が国有化を急いだ、という見方を示している。「暗闘 尖閣国有化」,新潮社,春原剛,204頁(2015年8月1日)

日本が中国に対して戦闘的な姿勢を持つと、在日米軍を日中の戦闘に巻き込むのではと米側へ激しいストレスをかけてしまいます。日本が中国など近隣諸国を煽りリスク・テイクをするのであれば、そのリスクは日本が背負うと明確にして欲しいと言う必要が生じたのだと私は推測しています。

だから自分がやりたくないときに、勝手にどこかの国の戦争に巻き込まれるのは、アメリカが二番めに許せないことなのです。それが表れているのが尖閣をめぐる日本と中国の争いに、アメリカが巻き込まれることに対する心配なのです。だからアメリカが見捨てるなどという心配は、当面まったくないけれども、今は逆にアメリカが、日本の戦争に巻き込まれることを心配している。それは心配というよりも、実はアメリカの国益にとって、基本的に絶対許しがたいことです。そこを見誤ると、アメリカの虎の尾を、日本が踏んでしまうことになりかねません。 「自分で考える集団的自衛権」青灯社,柳澤協二,109頁(2014年10月25日)

民主党の集団的自衛権賛成派

前原誠司氏達もまた、集団的自衛権賛成派です。アメリカ側とも話し合いを持っていました。

 民主党の保守系議員らでつくる勉強会「防衛研究会」(会長・前原誠司元代表)は4日、集団的自衛権行使の要件などを定める「安全保障基本法案」の骨子案を発表した。  集団的自衛権の行使を限定的に認める内容で、日本維新の会、みんなの党の見解と合致するものだ。限定容認に慎重な海江田代表と距離を置き、党内の「海江田おろし」を加速させるとともに、野党再編につなげる狙いがある。  前原氏は、13人が出席した会合で、集団的自衛権について「民主党もしっかりと議論し、認めるべきだ」と述べた上で、「政権を取り返したい」と強調した。  会合には、民主党政権時代に外相を務めた前原氏と松本剛明政調会長代理のほか、元防衛副大臣の渡辺周、長島昭久両衆院議員らが顔をそろえた。日米同盟を基軸とした現実的な政権担当能力を示す狙いがある。
民主党の「防衛研究会」のメンバーと4日の会合出席者 衆院:前原誠司(京都2区)、渡辺周(静岡6区)、長島昭久(東京21区)、笠浩史(神奈川9区)、鷲尾英一郎(比例北陸信越)、後藤祐一(比例南関東)(以上メンバー)細野豪志(静岡5区)、松本剛明(兵庫11区)、田嶋要(千葉1区)、吉田泉(比例東北)、古本伸一郎(愛知11区)、玉木雄一郎(香川2区) 
参院:風間直樹(新潟)、大野元裕(埼玉)(以上メンバー)榛葉賀津也(静岡)、金子洋一(神奈川)、広田一(高知) 「前原氏ら集団的自衛権を限定容認…海江田おろし」讀賣新聞2014年06月05日07時23分
日本の大陸間弾道弾に対する迎撃能力が残っていればだが、日本が「アメリカへのミサイルは集団的自衛権を行使して必ず撃ち落す」と常に言い続けておれば、アメリカが核による報復を行う可能性は高くなる。なぜなら、シアトルやロサンジェルスが危機に曝される危険性が減るからでる。そうすれば逆に、北朝鮮の日本に対する核攻撃の可能性は低くなる。つまり、核の抑止力がある程度働くのだ。ミサイル防衛における集団的自衛権の行使は、アメリカを守るだけではなく、日本に対する核の傘を強化することにつながると考えるべきである。 集団的自衛権の行使は日本を守ることにつながる,前原誠司の「直球勝負」(31)

日本の防衛における米国側の不満

バーチャル・シンクタンク日経CSIS主催の会見でも、アーミテージ氏・ナイ氏は日本の防衛について米軍だけが それに従事するような発言に対して、不公平だと不満を表明していました。
NHKのインタビューでも、日本周辺有事における自衛隊による米軍兵士の安全確保を求めています。

河野「ガイドライン見直しを含む安倍首相の訪米にはどんな意義があると考えるか?」
知日派で知られる アーミテージ元国務副長官 「それは安倍首相の言葉に表れている。『ついに1+1が2になる』、つまり、より対等なパートナーシップになるということだ。 日本周辺でアメリカ人を守るため、自衛隊員も命を懸けるという宣誓なのだ。 そして日本が、日本や周辺地域の人々のため、もっと指導的な役割を果たすよう期待している。」

安倍首相訪米・ワシントン報告 NHKニュースウォッチ9, 2015年4月28日(火)

個人的には日本周辺での日本の防衛なので、これはごく当然の要求であると思います。2015年7月13日国会にて 憲法学者の木村草太 氏が触れたように、憲法解釈上も日本有事の際の日本防衛中の同盟国軍の防衛は違憲ではなく、1975年10月29日の衆議院予算委員会における宮澤喜一外務大臣答弁でそれは個別的自衛権で 可能であると説明されているように、ここでも日本とナイ氏・アーミテージ氏の意思疎通の不具合を感じます。

アーミテージレポートと安保法案-翻訳の狭間と法律論の齟齬

米CSISの推奨-日本周辺有事の集団的防衛≠集団的自衛権

米国系シンクタンクと日本の政治家の一部が憲法解釈について正確な背景を共有できないまま非公式な同意をしている事が日本へ大変な不具合をもたらしているので、いっそこの際彼らと広く国民に対してオープンな会合を持ってはどうかと思います。 シンクタンクCSISの意見はイコール米国の意見ではありませんが、日本の政治家や経団連・日経系人脈は数少ない知日派のコネクションであるため重視しているようです。

先走る日本の逸脱-日本会議内閣の行方

上記ナイ・アーミテージレポートの意図を汲んでいるようでいて、実はかなり推奨されている内容より攻撃的な法案を通そうとしています。

紛糾する自民党案

存立危機事態地域限定ほぼ無し(他国領域へ行くのはホルムズ海峡だけという国会での口述は、明文化されていない)で口述では部分的な、法律の文言では色々な範囲にとれる集団的自衛権行使を主張、 他国防衛は憲法違反で不可能と学者や市民からの猛烈な反発を受けています。

存立危機事態
武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(改正法案)
第2条4 存立危機事態 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう
「(武力行使の)新3要件」
(1)自衛隊法第76条(改正法案)
1 我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態
2 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態
(2)武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(改正法案)第9条2のロ 
事態が武力攻撃事態又は存立危機事態であると認定する場合にあっては、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、事態に対処するため武力の行使が必要であると認められる理由
(3)武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(改正法案) 第3条4 
ただし、存立危機武力攻撃を排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案 新旧対照表

米シンクタンクと日本の齟齬

A change in Japan’s prohibition of collective self-defense would address that irony in full. A shift in policy should not seek a unified command, a more militarily aggressive Japan, or a change in Japan's Peace Constitution.

"The u.s.-japan alliance" anchoring stability in asia,August 2012

集団的防衛が可能となるための改正は平和憲法の改正を追求するべきでもないとアーミテージレポートには書かれているので 「平和憲法改正」と「憲法9条改正」はイコールではないようです。もっとも攻撃的な国の軍人出身のアーミテージ氏としては、憲法9条でPKOも面倒くさくし、集団的防衛をできなくしてるから日本有事でも自衛隊は米軍を守れずトータルな日本防衛もできないので、日米同盟にとって9条は邪魔だと考えているようですが、アメリカとしては極東の軍事バランスも大切で、ここ近年台頭してきた右傾化傾向にて日本が再度軍拡をするという状況も望むべきでない危険であるという立場でしょうから(その状況を米国が利用するケースがないとは言えないものの)、憲法改正までは迫れない立場だと推測できると思われます。

ナイ・アーミテージレポート

第1次アーミテージレポート

it is time for burdensharing to evolve into power-sharing(権力分担へ発展する責任分担)という言葉が全てを表していると思います。アメリカと大英帝国の関係をモデルとして、色々な提言をしています。

Japan’s prohibition against collective self-defense is a constraint on alliance cooperation.
Lifting this prohibition would allow for closer and more efficient security cooperation.
意訳:総体的な日本の集団的防衛の禁止は、同盟協力への制約です。
この禁止を解除することは、より精密でより効果的な防衛協力を提供します。

…Full participation in peacekeeping and humanitarian relief missions.
Japan would need to remove its 1992 self-imposed restraints on these activities so as not to burden other peacekeeping nations.
意訳:平和維持と人道援助任務への完全な参加。
日本は、他の平和維持国に負担をかけないようにこれらの活動に関して1992年の自主規制を取り払う必要があります。

…Broadening the scope of U.S.-Japan missile defense cooperation.
意訳:日米ミサイル防衛協力の範囲拡大。

"The United States and Japan:Advancing Toward a Mature Partnership" Institute for National Strategic Studiesational Defense University, October 11, 2000

第2次アーミテージレポート

サブプライムローン問題が健在化する前の好景気イケイケな合衆国という感じがする第2次アーミテージレポートは様々な事を要求していますが、莫大な研究開発費がかかる防衛技術予算をいかに多国間でシェアさせるかについては今も色々な動きをしているようです。日本の出資を促す動機付けクッキーは「防衛」ですが、下手に米国側の要求を全て呑めば科学技術関連費用のほとんどが産業の利潤の為に費やされる可能性すらあります。分担して両国共に予算削減へと結びつくのであれば武器も必要な公共設備なのでメリットはあるのですが、市場原理の外なので、必要以上の投資や予算増大を抑制する原理がなく、理性的な抑制が効くかどうかは安倍政権下の日銀が強烈な金融緩和をする体質なので極めて疑問です。公共事業に中毒性があるのは、原発事故で垣間見えた構造でした。

The United States and Japan should increase capabilities to respond to urgent crises.
意訳:アメリカ合衆国と日本は、緊急の危機に反応する能力を増やさなければなりません。
Japan’s capabilities for peacekeeping and humanitarian and disaster relief missions should also be strengthened.
平和維持と人道的な災害救助任務の日本の能力も、強化されなければなりません。
Japan should plan for hostage rescue and develop the necessary expertise.
意訳:日本は人質救出に対してプランを立てなければならず、必要な専門知識を高めなければなりません。
Japan should consider raising the priority of these mission areas outlined in its current legislation.
意訳:日本は、現在の法律で規定されるこれらの任務区分のプライオリティーを上げるよう検討しなければなりません。
Raising Japan’s defense capabilities to adequately address these areas is necessary given Japan Self-Defense Forces deployments and the security environment it faces to 2020.
意訳:これらの任務区分へ十分に対応するために日本の防衛能力を上げる、それが2020年まで直面する日本の自衛隊に必要な防衛環境です。

…Japan recently amended its so-called Three Principles on Arms Exports to allow for greater participation in U.S.-Japan missile defense programs.
意訳:日本は、日米ミサイル防衛プログラムへのより広い参加への考慮を踏まえ、最近いわゆる武器輸出3原則を改めました。
As a next step Japan should lift the remaining prohibitions.
意訳:次のステップとして、日本は残りの禁止令を解除しなければなりません。
The Japanese government should also actively encourage greater involvement of its civilian industrial base in the development of homeland security and national defense technologies and allow funds from its large national science and technology budget to be dedicated to defense-related technology research programs.
意訳:日本政府は、国土安全防衛を基盤とした民間企業との緊密な関係を活発に促進し、防衛技術研究プログラムのための国家防衛技術と巨額な科学とテクノロジーの国家予算からの支出を可能にするべきです。

In particular, in light of recent events, Japan should consider developing a special budget for ballistic missile defense.
意訳:特に、最近の出来事を考慮して、日本は弾道ミサイル防衛網のために特別予算を開発することを検討しなければなりません

The United States and Japan should consider opportunities for joint development of key systems, subsystems, and related technologies for the CG(X), the successor to the Ticonderoga Class, Aegis Guided Missile Cruiser. CG(X) is destined to play a critical role in both national missile defense and extended air defense against next generation threats.
意訳:アメリカ合衆国と日本は、鍵となるシステム、サブシステムと関連したテクノロジーの共同開発の機会をCG(X)、Ticonderogaクラスの代わるもの、イージス誘導ミサイル巡洋艦のために考慮しなければなりません。 CG(X)は、次世代の脅威に対して本土ミサイル防衛と延長した防空で重要な役割を演ずる運命にあります。

Japan’s determination to allow military exports to the United States presents an opportunity for greater efficiencies in the development, maintenance, and production of increasingly costly defense equipment and bolsters interoperability.
意訳:アメリカ合衆国に武器輸出を許可する日本の決意は、ますます高くつく防衛装備の開発、メンテナンスと製造においてより大きな効率の機会を示して、インターオペラビリティを強めます。

Reaching an overarching agreement to secure shared government-to-government classified information will be a key step in this direction. Further, the United States and Japan should develop a forum for the discussion of releasability issues.
意訳:政府間機密情報共有を確保する全てに関する合意へと達することは、この方向における鍵となるステップです。 さらに、アメリカ合衆国と日本は、譲渡可能問題に関する議論のために、フォーラムを開発しなければなりません。

In the interest of better coordination, the United States should encourage the placement of a Japanese Defense Ministry representative at PACOM, and a U.S. military representative at the Joint Staff Office.
意訳:より良い調整のために、アメリカ合衆国はPACOM(アメリカ太平洋軍 )の日本の防衛省代表と共同の事務局の米軍代表者の配置を促さなければなりません。

This should be viewed as a first step toward enhanced operational integration in the region that should occur irrespective of Japan’s internal decisions on collective self-defense.
意訳:これは、集団的な防衛についての日本国内での決定にかかわりなく生じなければならない、地域での強化された指揮系統の統合への第一歩として見られなければなりません。

"The u.s.-japan alliance" Getting Asia Right through 2020,February 2007

民主党政権誕生、尖閣諸島沖漁船衝突事故、そして原発事故

2008年9月にリーマンショック、2009年9月民主党政権誕生が発足。
2010年9月7日尖閣諸島沖漁船衝突事故が発生し、安倍晋三元総理は我が国が領海侵犯を受けたのになぜか他の国の防衛を意味する集団的自衛権の行使武器三原則の緩和を表明します。

 【ワシントン=佐々木類】自民党の安倍晋三元首相は15日、ワシントン市内で講演し、沖縄・尖閣諸島近海での中国漁船衝突事件について「中国の蛮行に対して日本は船長を解放して間違ったメッセージを送ってしまった」と批判した。
 同時に、領土を守るという断固とした姿勢を示すため「集団的自衛権の行使を認め、(海外への武器輸出を原則禁じている)政府の武器輸出三原則の見直しを進めてIT産業を活性化させる必要がある」と語った。
 軍拡を進める中国共産党については、「経済的不満が国民の偏狭的な愛国心を刺激し、怒りの矛先が指導部に向かうことを恐れている」と分析した。
「船長解放間違った」 漁船衝突 安倍元首相、米で批判,2010年10月16日(土)産経新聞

2011年3月11日には東日本大震災と福一原発事故が発生。日本政府の指揮系統の脆弱性と米軍の機動力の対比が明確になります。トモダチ作戦に従事した空母ロナルドレーガン搭乗員が被曝する事件が発生しました“ US sailors prepare for fresh legal challenge over Fukushima radiation"。おそらく、アメリカもまた日本の指揮系統の脆弱さに失望したのではないでしょうか。

第3次アーミテージレポート

日本への軍事的要求はその表現を弱め、人権と法治主義重視の姿勢が盛り込まれ、皮肉にもそれと入れ替わるように2012年の冬から日本会議メンバーを中心とした安倍政権の社会保障や天賦人権説に否定的な、法律による秩序維持無視の姿勢が浮上してきます。

アーミテージレポートは平和憲法を変更するべきではないと書いている
Prohibition of Collective Self-Defense
The triple crises of 3-11 and Operation TOMODACHI raised an interesting irony for deployment of U.S. and Japanese forces. "The u.s.-japan alliance" anchoring stability in asia,August 2012
Since 3-11 was not a matter of defending against an external threat, the JSDF and U.S. forces acted without heeding the prohibitions of collective self-defense.U.S. warships moved JGSDF troops in Hokkaido to northeast Japan in response to the crises. "The u.s.-japan alliance" anchoring stability in asia,August 2012
Both nations’forces acted to make operational the key airfield in Sendai from which military and civilian organizations conducted disaster response and relief.These efforts created the conditions for recovery in Northeast Asia."The u.s.-japan alliance" anchoring stability in asia,August 2012

In addition to the lax interpretation of Article IX during Operation Tomodachi, Japan and the United States, in cooperation with several other nations, are fighting piracy in the Gulf of Aden.Japan has reinterpreted legal issues to enable participation in vital antipiracy missions in the Indian Ocean.

"The u.s.-japan alliance" anchoring stability in asia,August 2012

The irony, however, is that under the most severe conditions requiring the protection of Japan’s interests, our forces are legally prevented from collectively defending Japan.

"The u.s.-japan alliance" anchoring stability in asia,August 2012

A change in Japan’s prohibition of collective self-defense would address that irony in full. A shift in policy should not seek a unified command, a more militarily aggressive Japan, or a change in Japan's Peace Constitution.

"The u.s.-japan alliance" anchoring stability in asia,August 2012

Prohibition of collective self-defense is an impediment to the alliance.
3-11 demonstrated how our two forces can maximize our capabilities when necessary.

"The u.s.-japan alliance" anchoring stability in asia,August 2012

It would be a responsible authorization to allow our forces to respond in full cooperation throughout the security spectrum of peacetime, tension, crisis, and war.

"The u.s.-japan alliance" anchoring stability in asia,August 2012

尖閣諸島国有化と輸出の落ち込み、第二次安倍政権の誕生

2012年9月には、日本の国有化が契機となって尖閣諸島問題が発生、 対中国向け輸出が激しく落ち込み景気を押し下げ円安へシフトします。2012年12月第2次安倍政権誕生、 アベノミクスと日本銀行の異次元金融緩和がはじまります。

アメリカが日本に要求する集団的自衛権

集団的防衛上、憲法9条の禁止事項は日米にとって障害?

憲法9条改正を求めるアーミテージ氏は、それと同時におこなわれるべき重大な前提条件について話しています。その条件は安倍政権の価値観から考えれば、未達という意味となるでしょう。少なくとも去年の時点では苦言でありました。歴史修正主義的・復古的姿勢の日本も込みで米国が改革を希望するようになれば、それは日本が捨て石となった時だと思われます。そもそも米国が憲法9条で日本を封じたのも、歴史修正主義的・復古的パッションを封じるためでしょうから、それがなくなれば憲法9条の改正はいい結果を生むというのはトートロジー的でもあります。

Q: Regarding constitutional change, some people have expressed concern that a move by the Abe administration to revise Article 9 of the Constitution could raise tensions or lead to instability in East Asia. What is your view on this issue?

意訳:憲法改正について一部の人達は、憲法の第9条を修正する安部政権による動きが緊張を高め、東アジアの不安定性につながるだろうという懸念を表明しました。この問題に関する意見をお聴かせください。

A: Well, my view is, first of all, this is a decision for Japanese, obviously. It’s not an American decision. Second, I have said, and Dr. (Joseph) Nye has written with me, that Article 9 prohibition on collective self-defense is an impediment to alliance cooperation. So, to the extent Mr. Abe can loosen up that we can have even greater cooperation. Whether this is accomplished by a change of Constitution, or by a change of Cabinet Legal Office interpretation, is Japanese business. But yes, I would welcome it. But I will note that to change the Constitution takes a lot of effort and a lot of energy, and I just wonder if it might not be easier to have a reinterpretation by the Cabinet Legal Office.

意訳:(アーミテージ氏)まず、私の全ての意見のこれが第一ですが、これは明白に日本人決定であり、アメリカの決定でありません。 第2に、憲法第9条と集団的な自衛の禁止は両国の同盟協力にとって障害であると私もナイ博士も、書きました。 なので、安部さんがそれを緩めできる範囲を広げれば、我々はさらにより大きな協力を持つことができます。 その変化が憲法の変更によってであっても、内閣法制局の解釈変更によってであっても、それは日本の問題なのです。しかし私はそれを歓迎します。 ただ、私は憲法改正が多くの努力と多くのエネルギーをとると思いますし、内閣法制局の再解釈を得る事はより難しいのではないだろうかと思います。

Q: So you aren’t worried about possible instability or tensions in East Asia that might result from changing the Constitution or changing the interpretation?

意訳:では憲法改正または憲法解釈変更により生じるかもしれない東アジアの不安定化または緊張発生については心配されませんか?

A: I worry about the tensions that exist right now in Asia, particularly those surrounding the Senkakus. I worry that there could be a miscalculation. If Japan decides to free herself from Article 9 prohibitions, I will welcome this, as I’ve said. But it’s important, I think, that at the same time, that Japan makes it very clear that Japan does accept the Potsdam Declaration, the Cairo Declaration, is not trying to reverse the verdict of World War II, and that Japan is forward-thinking, forward-looking. These are the important matters. If those are all done together, that is, there’s no historical revisionism, there’s a change to the Article 9 prohibition, and Japan makes it clear that Japan’s looking forward, not backward, then it will be fine.

意訳:(アーミテージ氏)私はアジア、特に尖閣諸島周辺領域で今現在存在する緊張について心配しています。
私は誤算が生じるかもしれないと懸念しています。
もし日本が第9条の禁止から自分自身を解放すると決めるなら、既に述べた様に私はこれを歓迎します。
しかし私が思うに、日本がポツダム宣言・カイロ宣言を受け入れ第二次世界大戦の裁定を翻そうとしていない施政をとり、そしてそれらは日本が進歩的で、先進的であるからだということを非常に明確にすることが同時に重要です。 これらは、重要事項です。それら全てが同時になされるのであれば、つまり、歴史修正主義的姿勢が皆無ならば第9条の禁止の変更のチャンスがありますし、日本が日本は先進的であり復古的ではないと明らかにするのであればそのときは良い結果となるでしょう。


"Armitage: Rebuilding Japanese economy is most important task facing Abe administration"By TAKESHI YAMAWAKI/ American General Bureau Chief of The Asahi Shimbun,July 27, 2013

押しつけ憲法論と第9条

日本国憲法はアメリカから押しつけられたものだという意見があります。確かにそうだとは思いますが、憲法9条で牙を抜かなくてはならないほど日本は危険なカルト思想(国家神道)に染まっていたからではないでしょうか。
その危険なカルト思想が今また政治の中枢に侵入しようとしているように思えます。
憲法9条を被せられた理由も、日本人がそれを安心して破棄できない理由も、日本の右側の宗教的背景を持つ危険なタナトスにあるので、それが治癒されて理性的な意志決定哲学を形成できない限りは、真の意味で解放されることはないと思われます。

安倍総理は急ぎ過ぎでは?と提言するアーミテージ氏

また、アーミテージ氏には、安倍総理は変化を急ぎすぎて民主主義的プロセスを踏んでいないのではという懸念もあるようです。

春原剛氏(日経編集委員、CSIS客員研究員):今回の首脳会談で新しい日米ガイドラインというのを造りたいと、 ガイドラインの中に日本が集団的自衛権を行使できるんだという文脈を入れたいんだと、そういう側面もある、 それによってアメリカのリバランシング、あるいはアジアへのコミットメントをよりしっかりとしたものにするんだと、 そういう狙いがあるんだと言われているんですけれども、やややはりアーミテージさんから観て急いては事をし損じるって 言葉が日本語にあるんですけれども、あんまりラッシュすると、急ぎすぎると失敗するという懸念があるという事でしょうか?

アーミテージ元米国務副長官:私が観ている限りで言えることなんですけれども、安倍政権の計画、 かなり前倒しで進んでいる部分があると思います。特に日米の防衛ガイドラインに関しても言えると思うんですね。 正しい事であればいいんですけれども、正しい事が出来なくて急いては事をし損じる、それはいけない。 つまり正しい事をするということは、日本の人々の大半の賛成を得られる 方向へもっていく、これが重要だということです。

アーミテージ氏:憲法第9条をどうするかということよりももっと色々な質問の仕方があると思うんですね。 日本は近隣諸国との色々な課題をかかえている、アメリカとの関係をより良くすることによってもっといい結果が得られる、 それを間違って使うことはしないというような訴え方、他にあるんではないでしょうか。それが欠けているのかもしれません。

春原剛氏:集団的自衛権を行使できるようにしようと考えている人は、寧ろ憲法9条、憲法改正というのは非常に長い道のりなので、 とりあえずここで行使できるようにしとく事が、さっきも申し上げましたけれどアメリカのアジアへのコミットメントを強くし、 しかも今中国の脅威が増大している中でですね、日本の防衛力を広い意味で高めよう、こういう狙いだと思うんですね。 ただ、アーミテージさんも言われた様に世論も含めて、あるいは政党、自民党の中ですらいろんな議論がありますから、 まあじっくり議論をしなくてはいけないというのはやっぱりその通りだと思うんです。

アーミテージ元米国務副長官:おっしゃる通りだと思います。何かを変えるためには、何か悪い事をしようと思うと 、悪い結果しか得られないのです。ですから、できるだけ時間をかけて正しい結果を出せるようにすることが必要だと 思います。日本の過半数の意見に合った結果を出すこと、安部総理また自民党の人々がどれくらいのエネルギーをそこに投入できるか、 どれだけの時間をかけられるか、それが問題だと思います。

2014年4月22日テレビ東京日経プラス10出演
自民党の石破茂幹事長は22日、都内のホテルで、米国のアーミテージ元国務副長官と会談した。 知日派で知られるアーミテージ氏は、安倍政権が進める集団的自衛権の行使容認の議論について「急ぐ必要はない。 政権の求心力を維持する上でも経済政策を優先するべきだ」と述べた。
「急ぐ必要ない」 集団的自衛権行使容認の議論 - 朝日新聞,2014/04/22
自民党の石破茂幹事長は22日、米国のアーミテージ元国務副長官と東京都内で会談し、 安倍晋三首相の目指す集団的自衛権の行使容認などについて協議した。 アーミテージ氏は「安倍政権を長く続かせるためには、経済を最優先でやらなければならない」と述べ、 安全保障政策は丁寧に議論を進めるべきだとの認識を示した。
アーミテージ氏:「安倍政権は経済優先で」 …石破氏と会談-毎日新聞,2014/04/22

米国政府も、オバマ大統領、両院、国防・インテリジェンスサイドで微妙に意見は異なるはずで、そこへ一見アーミテージ氏達の意向を汲んだように見えなくもない自民党の独自路線が重なり、事態は悪い方向へ進みつつあるようです。